不活性電子対効果(inert pair effect)

ハウスクロフトにあまり詳しく載っていなかったので、整理しときます。
「不活性電子対効果」とは周期表の下の方の原子では酸化されにくい電子が二電子生まれる効果。(日本語が下手なのはご愛嬌)まあ要するにTiはⅢ価よりⅠ価を、Sn,PbはⅣよりⅡ価をとりやすくなる効果のことです。そんなに難しい話でもないのですが、説明して行きますね。
相対論的効果を考慮すると粒子の質量は \begin{align}
m=m_0/\sqrt{1-(v/c)^2}
\end{align} となります。また、ボーア半径は \begin{align} a_0=\frac{4\pi\epsilon_0\hbar^2}{me^2}
\end{align} 電子の速度は運動方程式から \begin{align} v=\frac{Ze^2}{2\epsilon_0mv^2}
\end{align} ここら辺の導出とかもそのうちやります。
さて、重い原子ほど核電荷が大きくなるため電子の速度が光速に近づくことがわかります。(例えば水銀原子の1s軌道は光速の57\%程度の速さ)
そのため電子の質量が重くなり、ボーア半径が小さくなります。この効果は式を辿れば有効核電荷{Z^2}で効いてくるんだなってことがわかりますね。
また、この効果は有効核電荷を大きく受けている方が有利に働くので、s>p>d>fの順だと予想できます。

全ての軌道はボーア半径をもとに規定されているので、相対論的効果を受けると極端に極端に軌道半径が収縮し安定化を得ます。つまり、高周期元素では最外殻のs軌道が安定化され剥がれにくくなります。これがはじめに書いた「不活性電子対効果」の仕組みですね。